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【スポーツニッポン】今季のバルサは優雅で鋭利な芸術だ(2009年5月7日)

 74年W杯は、サッカー界における歴史的なターニングポイントだった。リヌス・ミケルスが造り、ヨハン・クライフが率いたチームは、武将たちの一騎討ちが主流だったそれまでのサッカーを、集団歩兵戦へと劇的に変化させた。2次リーグでオランダに粉砕されたブラジルは、以後、自分たちのスタイルを貫くべきか、欧州スタイルを取り入れるべきかという長い試行錯誤へと突入していく。

 09年は、21世紀に入って最初のターニングポイントとなるのかもしれない。

 手ほどには器用でない足を使う競技であるため、サッカーには常に「一か八か」の要素が含まれている。ゴールキックからの競り合い、センタリングへの飛び込み、こぼれ球のシュート......プレーしている選手たちに、成功の確証はない。そして、どちらが勝つかわからない戦いの連続こそが、ファンを熱狂させてもきた。

 そんな中、まったく異質なサッカーで欧州の頂点に駆け上がろうとしているクラブがある。FCバルセロナである。

 世界中で生まれているゴールの多くが、四捨五入すればゼロになってしまう程度のパス本数から生まれている中、今年のバルセロナは、20本、30本以上のパスを連ねたうえでのゴールを面白いように量産している。一か八かのプレーを極限まで排除し、ゴールネットにまでパスを送り込もうとするサッカーは、もはや芸術の域に達していると言っていい。

 興味深いのは、FWアンリのコメントである。

 「自分のキャリアの中で、こんなにも体力を要求されるサッカーは初めてだ」

 ダイナミズムに溢(あふ)れ、傍(はた)から見れば世界一パワフルに感じられるプレミア・リーグで戦ってきた男が、バルサの練習の厳しさに音をあげかけたのである。

 通常、徹底して体力作りにこだわったチームは、展開するサッカーにその成果がわかりやすく現れる。だが、いまのバルサのサッカーに、熾烈(しれつ)なトレーニングの気配は微塵( み じん)もない。それこそ、バレエやフィギュアスケートのように、彼らは優雅に舞って見せる。

 時代が変わるかもしれない。リーガエスパニョーラや欧州CLで、世界の強豪を相手に結果を出してきたことで、世界のサッカーは大きく変わるかもしれない。



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