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【スポーツニッポン】「喜ばしい」W杯決定試合の低視聴率(2009年6月13日)

 W杯出場を決めたウズベキスタン戦の視聴率が、過去の本大会出場決定試合に比べるとずいぶんと低かったらしい。その数字を取り上げて、サッカー人気の低迷に結びつける報道もあった。

 だが、わたしは低かった視聴率を、喜ばしい現象だと感じている。多くの日本人にとって、もはやW杯は「出場することに意義がある」大会ではなく、本気で勝利を狙っていく大会に変わりつつある。それゆえの低視聴率だと思うからだ。

 本大会出場が決まる試合に全国民が注目するということは、それだけ、本大会へのハードルが高いということを意味する。そして、高いハードルを越えたあとには、間違いなくある種の達成感、虚脱感が残る。出場するだけで満足してしまい、予選ほどには必死になれない空気が生まれる。その典型的な例が、初出場となったW杯フランス大会だった。

 今回は違う。岡田監督は本大会でのベスト4を目標に掲げ、その目標に呼応する選手も現れてきた。ファンも、本大会に出場が決まっただけで狂喜することはなくなった。戦力的にはともかく、メンタリティーとしては、間違いなく4年前よりも進化している。

 とはいえ、目標を達成するにはまだまだ足りないものもある。

 今年、世界のサッカー界で最も成長した選手を1人挙げろと言われたら、わたしはバルセロナのCBピケと答える。開幕当初は不安定な守りが目立ったが、シーズンが進んでいくに連れて自信を深め、守りはもちろんのこと、攻撃面でも力を発揮するようになった。

 彼を育てたのは、カンプ・ノウの観衆だった。

 シーズン中盤、それまで近くにいる味方にボールを渡すだけだったピケは、長いフィードにも挑戦するようになった。

 カンプ・ノウは、そのパスに拍手を送った。長いフィードといっても、ラストパスではない。攻撃の第一歩となる、長いけれども地味なパスである。そんなパスに、目の肥えた観客は拍手を送り、拍手は、ピケの自信を膨らませた。シーズン終盤、彼は攻撃参加にも意欲を見せるようになり、宿敵レアル・マドリード戦ではゴールも決めて見せた。

 今、日本のスタジアムで応援の手段として最もポピュラーなのは、歌である。歌は、選手を発奮させる。だが、選手を育てるのは、拍手と、時々の怒りである。岡田監督は、選手は、本気でW杯のベスト4を狙うという。ならばファンも、サポーターだけではなくファンも、選手を育てるための拍手を送ってほしい。どんな小さなプレーであっても。



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