株式会社クロス・ビー

COLUMN


 ここで負けたらヤバイ、という試合に、ついに負けてしまった。鳥谷に代打を送っての負け。代打に送られた桧山が打てなくての負け。連続フルイニング出場を断ち切られた鳥谷の腸は煮えくり返っているだろうし、打てなかった桧山は責任を痛感しているはず。 

 

 ここまで、負けたらヤバイ試合を神がかり的な勝負強さで拾ってきた真弓監督だけど、ついに底が抜けてしまった感がある。借金返済は当分先のことになりそうですな。 

 

 それにしても、凄いと思うのは岡田前監督のキレっぷり。真弓監督の采配を、ひょえーというぐらいブッ叩きまくっております。野球界......というか、スポーツ界の常識でいうと、現場復帰を願う人間は現場の人間に甘くなりがち。自分が戻った時にもそうしてもらいたいから、という感情が働いてのものだと思うのですが、いまの岡田さんに関して言うと、一切そんな空気が感じられない。阪神が好き。負けるのが許せない。たとえ監督をやっているのが先輩であっても許せない。そんな意気込みがヒシヒシと感じられます。 

 

 正直、監督時代の岡田さんには、その言語能力に大いに疑問を抱かされるところがあったので、評論家となってからの超辛口論客ぶりには度肝を抜かれました。ま、通訳というか、ゴーストをやってるデイリースポーツの記者の方が優秀なのかもしれませんけどね。 

 

 ただ、真弓監督としては当然面白くないはず。ほぼ全員が絶不調の打線の中から、あえて鳥谷を、岡田監督の寵愛を一身に受けていた鳥谷を外したのには、何か意味があるのでは、と勘繰りたくもなります。 

 とまあ、阪神の話題はさておいて。 

 

 こういうサイトをやっていて楽しみなのは、みなさんからのコメントを読むこと。パソコンを開いてみて、コメントがゼロだったりすると、次回更新の意欲が著しく衰えたりもします。

 

 でもって、わたくし、考えました。せっかくコメント機能があるんだから、そこを使って何かできないかな、と。というわけで、今日はお願いがあります。 

 

『国民体育大会』 

 

 みなさん、ご存じですね。略して国体。これを、英和辞典をひいたりしないで、英訳してみてください。直訳でもいいし、意訳でもかまいません。とにかく、日本人に馴染みのふかいこの大会名を、英語に訳していただきたい。で、それをコメントのところにバンバン寄せていただきたい。

 

 実は少しばかり、考えるところがあるもので。


『徒労』

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 1週間のご無沙汰です。

 実は先週の水曜日以降、スポーツ新聞のサッカー欄から目を背け、インターネットにはできる限り接続しない、という生活を送っておりました。

 すべてはバルサTVのため。

 というのも、コパ・デル・レイの決勝が水曜日の深夜に行われたのですが、収録は土曜日の夜。それまではなんとしても情報をシャットアウトし、疑似ライブの条件を整えたうえで収録に臨みたいなと考えたわけです。コパ・デル・レイぐらいなら、それも可能かな、と。

 とはいえ、チャンヒオンズリーグの決勝進出を果たしていることもあって、どこで「これで1冠ですね」とか、逆に「これで3冠はなくなっちゃいましたね」などと言われるかしらん。そのために、ネットやメディアの情報をシャットアウトしたうえで、海外のサッカーに興味のありそうな人が集まる場所にはできるだけ近づかないでおこうと、我ながら涙ぐましい努力をしてきたわけですよ。

 しかも、土曜日の昼間はJリーグの中継。エレベーターに乗ったら岡田監督が乗り込んでくるわ(「痩せたなあ、ヨメがキツいんか」と聞かれました。はいその通りです)、ホールに下りたらレッズの信藤GMから「お、ちょっと聞きたいことがあんねんけどな」と話しかけられるわ、タバコを吸ってたら川勝さんがやってくるわで、そのたびにこちらはドキドキ。(頼むからバルサだの3冠だのって言わんといてくれよ)と祈るような気分を味わったものでした。

 それでも、努力の甲斐あって情報シャットアウト作戦は見事に成功。無事、Jスポーツの控室に辿り着いたカネコタツヒト、今週の自分の努力がいかばかりのものであったのかを、とうとうとディレクターのスガワラ君に告げたのでありました。

「いやあ、それはよかったですね」
「どこで誰から言われるかわかんないからね。自分のサイトだって、コメントに何か書かれてたらヤバイから更新しなかったぐらいだもん」

 などと言っているところに、倉敷アナが登場。倉敷さんも、こちらが情報をシャットアウトして臨んでいることはご存じだったので、会話は必然的に当たり障りのないものに。幸い、控室のテレビでは中日対横浜戦が流れていたので、やれ落合監督がどうの、真弓監督はどうのとくっちゃべりながら、時間を消費していったのでした。

 ところが──。

 それはまさに控室を出ようか、というときでした。中日がサヨナラ勝ちを決めて気分をよくした倉敷さんがスガワラ君に言いました。

「だけどリーガの優勝はいつ決まるんだろうね。これでマドリーがビジャレアルに負けて決まっちゃったら締まらないよお」

 熱狂的なバルセロニスタの菅原君、自信を持って言い切ります。

「いや、でもビジャレアル、勝つでしょ。マドリー、もう終わっちゃってますもん」

 そこでやめておけばよかった。なのに、彼は言ってしまいました。言いくさりやがりました。

「明日、ぼくらが目を覚ましたときにはバルサ、2冠になってますよ」

 凍りつくカネコタツヒト。それに気がついてやはり凍りつく倉敷アナ。一人気づかぬスガワラ君。しばし沈黙、沈黙、沈黙......。

「あ」

(あ、じゃねえんだよ。ってことは、これから収録するコパは、バルサが勝って1冠を獲得したってことなのかよ。この1週間の俺の頑張り、どうしてくれんだよ!)

「ガ、ガンペール杯に続く2冠ってことですよ、も、もちろん」

 どこの世界にそれで納得する人間がいるのか、教えてもらえないかな、スガワラ君。

 張りつめていた糸がプツンと切れてしまった気分になったカネコタツヒト。仕方がないので、収録前にトイレに行くことにしました。で、トイレから出てくると、入り口のところでは頭を抱えてしゃがみこむスガワラ君の姿が。

「あれ、2冠ってガンペール杯に続いてのってことじゃなかったの?」
 スガワラ君、決壊。

「あ、いや、その......すいません!」

 いいよ、許すよ。ま、試合は面白かったし、翌日、琉球は延岡でホンダロックに快勝したしね。

 さてと、今日はこれから大阪行き。MBSで亀山つとむさんの番組にゲスト出演してきます。先週、学芸大学で連れパチをして以来、1週間ぶりのご対面です。

 もうラーメンはやめだっ!

 ということで琉球の試合については察していただきましょう。『大勝軒』、ダメでした。ラーメンパワーはアウェーのときだけすがるようにします。

 しっかし、今回のJFL、試合は土曜日だったんですが、この日は阪神も負け。でもって、昨日は日曜日の今季初勝利をあげました。琉球が負けると阪神も負ける。琉球の試合がないと勝つ。この悪循環、なんとかしないと。

 ただ、明るい話題がないこともない。2週間前にデビューしたFC琉球のオフィシャル・マスコット。ベールを脱いだ瞬間、カネコタツヒトは腹がちぎれそうになるぐらい爆笑したんですが、これが早くも大人気。週刊プレイボーイで取り上げられるわ、東北楽天イーグルスから出演の依頼はくるわで、大ブレークの気配です。どんなマスコットよ、と思われた方は、ぜひ琉球のホームページをご覧ください。

 それにしても、改めて感心させられたのはチェルシー対バルサの第二戦。『バルサTV』の収録、いつもと違って結果も内容もわかってての収録だったんですが、それでも興奮してしまいました。これはカネコタツヒトだけじゃなく、実況の平畠さんも同じだったらしく、収録が終わると、まるで生での観戦を終えたかのような虚脱感に2人で浸ってしまいました。

 で、収録終わりですぐ那覇に飛び、いきつけのスポーツバー『カンプノウ』に入っていくと、そこではさっき収録したばかりのバルサTVを放送中。さすがに3度目は......とも思ったのですが、これがまたいい。1度目より2度目、2度目より3度目の方がいろんなものが見えてくるというか、そんな希有な試合でした。みなさまもぜひお試しを。特に、『バルサTV』のカタラン語の実況は必聴です。

 で、ローマに行ってきます。

 びっくりしたのはホテルの価格。ネットで予約しようとしてみたら、決勝前日と決勝当日だけが、通常の3倍ぐらいの値になっとるやないの。でもって、どこもガラガラやないの。

 イギリス人、サッカーみるためにじゃんじゃん海を越えます。スペイン人、まだその感覚は希薄。というわけで、ホテル側はチャンピオンズ・リーグ景気を見込んでぼったくり値段をつけたものの、チェルシーが消えたことでイギリス人のキャンセル続出、ということなのかもしれません。

 ま、円が強くなってるんで、去年の今頃を考えれば格安なんですけどね。

 今日はこれからラジオの収録にいってきます。お相手はV6の岡田准一さん。ドラマ『SP』、大好きだったんで、楽しみです。


 チャンピオンズ・リーグ準決勝の結果は知りたくない、という方はご注意ください。『バルサTV』という仕事を抱える不肖カネコタツヒト、普段なら必死になって情報を遮断しているところなのですが、今回ばかりは我慢できず、Jスポーツのスタッフに「ごめん、今日は見ます」と宣言し、テレビの前にかじりついてしまいました。

 凄い試合だった。いや、凄い試合になるだろうと予想はしていたのだが、こんなにも劇的で、こんなにも残酷な、そしてこんなにも深い余韻の残る試合になるとは思わなかった。これよりも美しい試合ならば見たことがある。けれども、こんなにも凄まじい精神力を見せたバルサは初めて見た。大げさではなく、生まれて初めて見た。

 それにしても、なんとチェルシーの素晴らしかったことか。

 カンプ・ノウでの第一戦が0-0で終わった段階で、チェルシーは相当に苦しくなるのでは、というのが率直な感想だった。一般的な常識で考えれば、敵地での引き分けは勝ちに等しい。ただ、今シーズンのバルサは、ホーム、アウェー関係なく白星をあげまくっている。あのレアル・マドリーを相手に、敵地で6発もブチこんでしまうのが今シーズンのバルサなのだ。いかに堅守を誇るチェルシーといえども、もう90分間、バルサをゼロに抑えるのは難しい。せめてアウェーゴールを奪い、0-0でも勝ち上がれるというシチュエーションを作りたかったのでは、と思ったのだ。

 だが、スタンフォードブリッジでのチェルシーは、想像をはるかに超える奮闘を見せた。常識を超えたハイスピード・バトルにバルサを引きずり込み、相手のフィニッシュにおける精度を少しずつ、しかし確実に削り取っていく。常に100パーセントに近い確率のプレーを選択し、それをゴール前まで続けていくバルサが、この日は幾度となくフィフティ・フィフティのチャレンジを強いられた。パーフェクト・フットボールの象徴ともいうべきチャビにもいつになくミスが目立ち、ダニ・アウヴェスにいたっては、パス成功率50パーセントを切っているのでは、と思われるほどだった。

 しかも、チェルシーはただ守っているだけではなかった。

 ボール・ポゼッションでは圧倒的な劣勢に追いやられながらも、ブルーズの槍は2度、3度とバルサの喉元をえぐりかけた。プレミア勢にとってバルサのサッカーが異質に映るならば、どれほど押し込まれても鋭さを失わないチェルシーの攻撃は、バルサにとっても異質だったに違いない。

 だが、血飛沫をあげるはずだった穂先は、すべて、すんでのところで跳ね返された。決して高い評価を受けているとは言えないカタルーニャの門番によって、跳ね返された。バルサを天上に導いたのがイニエスタだとしたら、地獄に墜ちるのを救ったのはバルデスだった。

 歴史的な圧勝を収めたクラシコの翌日、カタルーニャの新聞『スポルト』は、出場したバルセロナの選手全員に満点の『10』をつけた。ただ、さしもの『スポルト』といえども、この日のバルサの選手全員に満点をつけることは憚られるだろう。

 つけられるとしたら、バルデスただ一人。とはいえ、2試合続けての満点も芸がない。わたしだったら、数字の代わりに「そして」という意味を持つアルファベットの一文字をヴィクトール・バルデスに捧げる。

 VICTOR+Y=VICTORY。

 バルデス、そして、ファイナル。西ドイツワールドカップ決勝のオランダ対西ドイツをも超える、歴史的決戦の実現である。

『本末転倒』

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「うわあ、こってりしてるな」「あら、あっさりしてるわ」

 最初の一口を含んだ瞬間、テーブルの両サイドからまったく異なる声が聞こえてきた。どっちも正しい、と思った。

 いやあ、めぐり合ってしまいました。自分のとっての醤油ラーメンナンバーワンに。

 それは2日前、日曜日の話。「去年の今頃は新幹線パンパンだったのに、今年は結構空いてるなあ。みんなクルマで移動してるんだろうなあ」などと思いつつ、パチンコ攻略マガジン、サイボーグ009、ドカベンなどを読みふけっていると、新神戸に到着したあたりでメールが入りました。FC琉球のオーナー、榊原さんから。

「笠岡駅で待ち合わせてラーメン屋に行きましょう」

 そもそもは「チームが勝つためなら麺にもすがる」というわけで始まったラーメン屋参りだったのに、ここにきて「どうせだったら日本中の美味いラーメンを食いつくそう」的な趣向に変わってきてしまいました。いいんですけどね、ラーメン好きだから。

 で、福山で山陽本線に乗り換えて3駅。笠岡駅からタクシーに乗って辿り着いたのが『中華そば・みやま』。その佇まいを一言で言えば「峠のそばや」ってことになるんでしょうか。ま、はっきり言っておんぼろ。ちょっと強めの台風が来たら店ごと持ってかれてしまうのでは、と心配になりそうな造りです。

 メニューはいたってシンプル。中華そば。餃子。おにぎり。以上。

 ただ、この中華そばが衝撃的な美味さでした。

 魚介の出汁がたっぷりと、ただしでしゃばらないギリギリのところまで効いた濃褐色のスープにぷかりぷかりと背脂が浮いて、平打ちの麺がスープをよく吸って......ああ、思い出しただけでもまた食べたくなってくる。あっさりしていると思えばあっさりしてるし、こってりしていると言えばこってりしてる。ベースにある強い和の香りを、背脂が中華風にアレンジしてる感じ。聞けば、ここの大将は8年前まで和食の職人をなさっていたとか。なるほどね、絶妙な出汁加減も納得です。

 しかも。

「せっかく遠いところから来てくれたんじゃけ、競技場まで送ったるわ」

 ほとんどのお客さんが自家用車で来店しているからなのか、タクシーで乗り付けた我々を、大将はお店のクルマでスタジアムまで連れていってくれたのです。忙しい最中だというのに。道中、お店がオープンするまでの経緯や、スープに対するこだわりなど、興味深い話をたっぷりと聞かせていただきました。

 ありえんよなあ、こんなこと。

 ちなみに、ラーメンパワーが効いたのか効かなかったのか、琉球は最下位の三菱水島相手に2度のリードを奪われ、それでもなんとか引き分けました。最下位のチームに圧倒された前半をふがいなしとするべきなのか、はたまた2度のビハインドを跳ね返した精神力を評価すべきなのか、なんとも難しい試合ではありました。

 ただ、ここはあえて引き分けてよかったということにしておきますか。

 今シーズンのJFLは、Jリーグの準会員になったチームが大苦戦中。おそらく、去年のように3チームもJ2に昇格するということは考えにくく、となると、JFLと地域リーグの自動入れ替えが実施される可能性が大。

 三菱水島、やばい。

 もちろん、目下17位の琉球もやばいと言えば相当にやばいのですが、そこはまあ、自己責任というか、自力で現在の順位から脱出すればいいだけのこと。でも、琉球はともかくとして、水島がいなくなってしまうと、来年、『みやま』に行く機会がなくなってしまう!

   そういう意味では、水島に勝ち点1をプレゼントできてよかった。来年のラーメンのために、よかった。

 なんだか、いよいよ本末転倒になってきた気がしないでもないのだが、それでもいいやって思えるぐらい美味しかった、『みやま』の中華そばでした。今週末は那覇で『大勝軒』かな。

『染みます』

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 「ヘヴィメタルは絶対に死なない。世界中に爆弾が落ちても、またどっかのゴキブリが、あのリフを弾くさ」(ボブ・ロック/プロデューサー)

 「ヘヴィメタルはヒーリング・ミュージックなんだ」(マーティ・フリードマン/ギタリスト)

 いやあ、癒されました。昨日の夜NHKのBS1で放送されたドキュメンタリー『みんなロックで大人になった・ヘヴィメタル』。ラーメン・パワーむなしく、あっさりと敗れてしまったFC琉球の試合ぶりに悲嘆に暮れていたのですが、ずいぶんと癒されました。

 番組によれば、社会的に弱い者、虐げられた者が救いとして求めた音楽がヘヴィメタルだったということ。わかります。痛いほどにわかります。どうしようもなくむしゃくしゃして、それでいながら脱出口が見当たらないとき、グレン・ティプトンとK・K・ダウニングのツインリードが、ロブ・ハルフォードの強烈なハイトーンが、どれほどのカタルシスを味わわせてくれたか。

 FC琉球、弱いもんなあ。

 試合前にラーメン食べたら勝てた。じゃあ次も行こう。というわけで、一昨日も試合前、行ってきましたラーメン屋さん。国際通りの牧志公設市場近くにある『暖暮(だんぼ)』というお店。福岡のテレビ局が実施したアンケートで人気1位を獲得したというお店の支店です。食べたのは、唐がらしをたっぷり入れた『烈火ラーメン辛さ10倍煮たまご入り』。

 これが美味いこと! コラーゲンの甘さと一味の辛さがドンピシャリっていうんでしょうか。あんまり美味かったので、朝っぱらから替え玉までいただいてしまいました。琉球が勝つために食べにいったラーメンでしたが、こうなったら勝ち負けに関係なく、お気に入りに入れることにします。次はねぎごまラーメン辛味多め、だな。

 それにしても、サッカーっていうのは難しい。

 先週、三重で戦った琉球の選手は、言ってみればハングリー・ライク・ア・ウルフな状態でした。何がなんでも勝ちたい。恥も外聞も関係ない。その思いが、たたみかけるような攻撃と、終盤の露骨な時間稼ぎになって現れてました。長くサッカーを見てきたけれど、コーナーフラッグをつかんで支えにして、ボールをキープしようなんてプレーは初めて見たもんな。

 で、何はともあれつかんだ初勝利。こっちも感動したし、選手たちも爆発的な高揚感を味わったはず。自信も戻ってきた。次はやれる。やれないはずはない。選手だけじゃなく、スタッフの間にもそんな空気が流れてました。遅ればせながら、ようやくみなぎってきた自信。

 でも、いまになって思えば、自信をつかんだ代償として、チームは大切なものを失っていたんだよなあ。

 飢え。

 試合内容が悪くなかったのは事実。特に前半。1点は失ってしまったものの、相手が放ったシュートはその1本だけ。初勝利をつかんだことで、琉球の選手たちは自信をもって試合を進めていた。

 難しいのはそこ。初勝利を収めたから、押し気味の試合ができた。反面、初勝利を収めてしまったから、数日前ほど勝利に対するこだわりが濃密ではなくなってしまっていた。石にしがみついても、といった必死さは希薄になり、それが後半の戦いぶりに現れた。普通、押し込んでいた試合をリードされて後半を迎えたら、それこそ相手をボコボコにするような勢いでなだれ込んでいくはず。ところが、琉球の選手たちは、前半いい試合ができたことに満足してしまったのか、後半に入ると明らかにアクセルをゆるめてしまった。で、余裕をもって相手に逃げきられてしまった。

 染みるわけです、ヘヴィメタルが。

『溺れる者』

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 それは先週土曜日のこと。名古屋を出発して約2時間、クルマが目的地の伊賀上野に入ろうとした時、バラさんが言いました。

 「そういや、北九州の時ってラーメン食べましたよね」

 バラさんとは、FC琉球のオーナー、榊原信行さんのこと。ええ、確かに食べましたとも。あれは去年の夏のニューウェーブ北九州戦。スタジアムについたらなにも食べるものがなかったんで、わざわざラーメン屋さんを探して食べにいきました。そしたら、チームは敵地のファンをも驚かせるようなサッカーを展開して、快勝しちゃったんでした。

 「ちょっと、食べていきましょうか、ラーメン」

 げ。新幹線の中で和牛すきやき弁当を食べ、名古屋駅のドトールコーヒーでジャンボだかジャイアントだかいうジャーマンドッグをいただいてしまったわたくし、まだ全然おなかはすいてないんですけど。
 「あ。あそこにあった。北海道ラーメン」

 あの、オーナー、北九州で食べたのはとんこつラーメンだったような記憶があるんですが。

 「じゃ、九州ラーメンの店、探しますか」

 どうやら、ラーメンを食べなくてはならないのは間違いなさそう。となると、この満腹状態でとんこつはキツい。入るとしたら塩ラーメン。ならば北海道ラーメンしかない──即座にそう判断したわたしは言いました。「いや、あそこにしましょう」

 オトコだよ 顔で笑って 腹で泣く。高田総統ならきっとそう言って褒めてくださったことでしょう。塩ラーメン、食べました。バターとコーンと味付けタマゴまでトッピングして、いただきました。おいしゅうございました。

 そしたら、勝っちゃいました。すんばらしい内容で、勝っちゃいました。

 試合後、当然のようにバラさんは言います。

 「こりゃ、次もラーメンですね」

 溺れるものは、麺にもすがる。もとい、すする。

 だが、ここで一つ問題が。沖縄といえば沖縄そば。うどんの美味しい讃岐にあんまり美味しいラーメン屋さんがないように、沖縄のラーメン屋さん、なかなか美味しいところがありませぬ。

 早急にリサーチをせねば。

 以前お伝えしたように、明日29日15時にキックオフされるFC琉球対V・ファーレン長崎の試合は、ニコニコ動画でライブ中継されます。解説カネコタツヒト。今日はこれから沖縄のラーメン屋さんを3軒ほどはしごして、その中で美味しかった店には明日の試合前にも足を運ぶつもりです。

 メタボより 大事なものが そこにある。

 ラーメン・パワーが、テレビ・マッチで一度も勝ったことがないFC琉球に勝利をもたらすことができるか。みなさま、乞ご期待。

『最低?』

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 彼が「最低の人間」っていうなら、俺も最低だな。

 「知人(総統閣下)とハシゴ酒だったというカネコ容疑者は、帰宅時、完全な泥酔状態。玄関前で"そ~れ~ゆけ~かめやま~、ご~か~いにしゃ~ぷにかっとばせ~"などと古くからの阪神ファンにしかわからないヒッティングマーチを口走った挙げ句、夫人の目の前で靴にむかって放尿したという。玄関は開けっ放しだったが、幸いにして近隣住民からの苦情はなかった」(夫人の証言による)

 目くそは鼻くそを笑えん。彼が最低だっていうんなら、カネコタツヒトも最低。でもって、公務で醜態をさらしてしまったどこかの国の元外務大臣は、オトコの中のオトコだよ......じゃなくて、最低の中の最低ってことになる。

 ですよね、鳩山さん。プライベートにおける失態で、かつ経済的、社会的なペナルティも受けてしまう人間をあれだけボロクソにけなす以上、未だに議員であり続ける同僚のことは、もっと痛烈にぶっ叩いてましたよね。

 聞いた記憶がないのは、単に耳に入らなかっただけですよね。

 それにしても、なぜ脱ぐ(笑)。脱がなかったら、逮捕されることはなかったのに。きっと、自分の身体に自信があったんだろうなあ。スリムに見えて「脱いだらひどいんです」なカネコタツヒトの場合、間違ってもその心配はないんだけど。

 と、ここで電話がかかってきた。出てみたら、カード会社から。

 「カネコタツヒト様でいらっしゃいますか」

 はい。そうですけど。

 「昨日、イタリアのミラノでお買い物をなされましたでしょうか」

 は? 今週はずっと日本にいましたけど。

 「ああ、やっぱりそうですか。昨日、ミラノのグッチで40万円をお買い上げになられたということはございませんね」

 ないですとも。というか、もしイタリアに行ったとしても、グッチとかに入ることってありえないっすから。ブランド大好き人間のトツカケイじゃあるまいし。

 「かしこまりました。どうやら偽造カードが作られてしまったようですので、早急にカードの方は止めさせていただきます」

 あ、そうすか。でも、どこで偽造されてしまったんでしょう。

 「カネコ様は最近、ドイツに行かれたことは?」

 あ、昨年の夏に、一度。

 「ここのところ、ドイツで偽造されてイタリアで使用されるという例が増えてきておりますので、カネコ様の場合もそのケースかと」

 ということは、キザキシンヤにご馳走するために行ったフランクフルトの日本料理店か、地ビールが飲める店のどちらかでやられたわけっすね。あ、プーマのアウトレットって可能性もある。でも、もし偽造したのが外国人だとしたら、カードのサイン、どうしたんだろ。俺のって、漢字なんですけど。

 慎重に 漢字をなぞる 外国人。そりゃ、店からカード会社に通報されるわ。

 ともあれ、グッチの店員さんだかカード会社さんだかが異変を察知してくれたおかげで、身に覚えのない40万円の出費を強いられることは免れました。昨日の阪神は完全な負け試合だったのに、ひーやん、トリの一発で連敗脱出。

 底は、見えたのかな。最低の状態は、脱したのかな。あとは勃つだけ、かな。

 FC琉球の明日の相手はMIOびわこ。滋賀のチームなのに、なぜか会場は三重。駅すぱあとによると、東京から約4時間強。

遠いなあ、でも、最低......じゃなくて、最下位、脱出したいなあ。

 ステラミーゴ(星のお友達?)いわて花巻。本日をもって、我が心の友となりました。昨シーズンのFリーグで1勝1分け19敗。頑張れ。機会があったら応援にいきます。

 さげちんも 底までいけば 勃つばかり。ユキさん。ありがとうございます。今後しばらく、座右の銘とします。小説は......たぶんありません。童貞のままでいきます。才能ないもんで。

 琉球のスタジアム問題。これに関しては、かつての我が天敵にしていまは友、おフランス人の総監督がホントに精力的に動いてくれてます。複数の地方自治体から打診も来ています。2月には糸満市が開催した「スタジアム建設に向けたシンポジウム」にパネラーとして仲良く2人で出席してきました(500人は集まる、と聞いていた聴衆は30人程度でしたけど)。「世界最高の2万人収容スタジアムを」が目下のポリシーです。これだけは、なんとしてもやりとげたい。

 ところで先日、カネコタツヒトが「ここ10年で出合った中で最もオーラを感じたオトコ」と一晩過ごす機会がありました。ま、端的に言ってしまえば麻雀なんですけどね。

 「FC琉球、6連敗なんすよ。こういう時って、どうしたらいいんすかね」

 局の合間に聞いてみると、考え込む、というか、何かを思い出そうとしている彼。なんたってカリスマ指導者です。その言葉には琉球の未来に関するヒントが隠されているかもしれん。パシッとドラを叩き斬ったりしながら、わたくし、待ちました。

 「う~ん......」

 どうよ、どうしたらいいのよ。

 「ないですね」

 は?

 「ないですね、早稲田の時もサントリーでも」

 何が?

 「連敗。負けたあとって、大概いい試合をするもんなので」

 キミに聞いたわたしが間違ってました。連敗脱出への答は自分で探すことにします。しっかし、あれだけ長くスポーツの世界で生きてきて、一度も連敗をしたことがないっていうのはスゴイ。つくづく、運の太いオトコだこと。

 でも、せめて麻雀ぐらいは、常に不運に見舞われてほしいもんだよなあ。

『とほほ。』

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 「とほほ」っていうのは、「途方」からきてるんだろうか、やっぱり。

 FC琉球6連敗。こたえます。へこみます。酒なしではいられなくなります。日本に限らず、ヨーロッパの主要リーグ、それも下部リーグまで探してみたけど、開幕6連敗っていうのはちょっと見当たらない。引き分けのあるサッカーで、負け負け負け負け負け負けっていうのは、やろうと思ってもできることじゃないってことでしょう。

 おまけに、JFLがある日曜日は、阪神の成績もよろしくない。ここまで1分け2敗。ここのところ、「朝、ブンデスリーガの速報を見る。ボルシアMG、また負けた。昼、JFLに行く、FC琉球また負けた。ついでに阪神もまた負けた」という日曜日が続いております。

 ボルシアが弱いのはわかる。カネがない。選手がいない。阪神が勝ててないのもまだわかる。けが人続出。岩田がいない。久保田がいない。赤星の腰が悪い。

 琉球は、わからん。なにかに呪われているとしか思えん。生まれてこのかた、ひたすらに弱いチーム、小さなチームに肩入れをしてきたけれど、こうも勝ち運に見放されてしまったチームは初めて見た。

 というか、わたくし、もう10カ月近く、琉球が勝つのを見てません。で、よりによって、藤川球児がタイロン・ウッズにイワされてしまい、そのショックで寝込んでいた日に限ってアウェーでソニー仙台に勝ったりしてます。

 カネコタツヒト、スーパーさげちん説、濃厚。

 ちなみに来る4月29日、FC琉球は今年からJFLに昇格してきたV・ファーレン長崎とホームゲームを行うのですが、その模様はニコニコ動画でライブ配信されます。解説......というか、応援コメンテーター、カネコタツヒト。興味のある方はぜひご覧ください。

 ちなみに、沖縄ではこの試合、琉球放送でオンエアされるのですが、驚くべきことに、FC琉球、この放送局が中継してくれた試合でただの一度も勝ったことがありません。心配したサポーターが放送席の周りに塩を撒いてくれても、スタッフが気合を入れて丸坊主にしてみても、一度も勝っておりませぬ。

チーム創設以来、一度も、です。 途方もない話でしょ。

 今年の流行語大賞の最有力候補でしょう。いまのところ。

「持ってる」

 そう心の底から思えるようになるには、どれほどの結果を残さなければならないのか。どれほどのルーティンを重ねることによって「このスタイルでやってきたんだから大丈夫」と信じられるようになるのか。ニワトリが先なのかタマゴが先なのか。いやいや、イチロー本が売れる理由がよくわかります。

 ま、もちろんイチローは凄い。ただ、今回の騒動......というか大騒ぎの中、一つ感心させられたことがあった。

 アメリカの姿勢。

 新聞なんかによると、アメリカのメディアは日本とアメリカを通算しての記録にかなり冷やかなところがあるという。当然でしょ。向こうはベースボール発祥の地。我こそが世界最高の舞台を所有する国であるとの自負がある。太平洋をはるかまたいだ島国でどれだけ打とうが、そんなもん、メジャーと一緒にするわけにはいかん。俺がアメリカ人、それもWBCなんぞになんの興味もないアメリカ人だったら、きっとそう思う。

 だって、たいていの日本人は、日本でプレーする韓国人選手の生涯記録なんかに興味を示したりしないから。

 日米通算の記録に何の意味があるのか。そう考えるアメリカ人がいる一方で、セーフコフィールドでは「ニュー・ジャパニーズ・レコード」の文字が電光掲示板に躍り、観客がスタンディングオベーションでイチローを讃えた。

 素敵だよなあ、こういうの。

 イ・スンヨブが日韓合計で何本のホームランを打っているのか。恥ずかしながらカネコタツヒトは知らなかった。朝鮮日報の日本語サイトを見てみたら、実は昨日の中日戦で打った2本目のホームランは、生涯通算450号だったという。

 すごい数字。王貞治さんほどではないけれど、すごい数字。でもって、イチローの3085本にしたって、ピート・ローズに比べればまだまだという見方ができる。

 アメリカの姿勢は素敵だった。日本の姿勢は、どうだったんだろう。

 さてと、それじゃ沖縄に出発しますか。

 それにしても、なんと酒の美味い季節になったことか。

 学生時代は2度ほど救急車のお世話になったことがある。もともと、酒はほとんど飲めなかった。飲めないのに、勢いで飲む。で、倒れる。ビールやチューハイだったらジョッキ2杯。それ以上飲んだらもうアウトだった。

 会社員になってからもヘタレぶりは変わらなかった。面倒見のいい先輩が多かったから、バンバン奢ってくれる。調子に乗って飲む。先輩の家に担ぎ込まれ、家中をゲロまみれにする。一度なんぞ、先輩の結婚式、二次会に続き「じゃあ、最後はウチで飲もうか」という言葉に本気で甘えてしまい、新婚初夜の新居にゲロまみれの手形をペトペトとつけてしまったこともある。夜中、ウッとなって目が覚め、トイレまでたどりつく前に逆流。なんとか手で抑えたものの、バランスを崩して......となってしまったのだ。

 俺が先輩だったら殺してるな、そんなやつ。

 振り返ってみると、ある程度の量を飲めるようになったのは、高田延彦さんと知り合ってからかもしれない。02年のことだから、いまから7年前のこと。

 ご本人曰く「現役のころに比べれば全然ダメだよ」とのことだったが、それでも、高田さんの飲みっぷりはハンパじゃなかった。

 大阪で世界柔道があった時のこと。「ちょっと見に行こうよ」と誘われたのでヒョコヒョコついていくと、吉田秀彦さん、加藤晴彦さんも合流して新地に繰り出すことになった。お店に入ったのが午後10時。出たのが午前4時。気がつけば森伊蔵のボトルが7本空いていた。

 高田さんには大変危険なクセがある。酒の入ったグラスをチンと合わせると、必ずこう言い出すのだ。

 「たっつぁん、物書きだからわかってるよね。乾杯とは、そう、杯を乾かす。はい、気持ちよく乾かしてみようか」  つまり、イッキ。これが最初から最後まで続く。というか、最後になると乾杯に次ぐ乾杯ということになる。こういうヒトと付き合っていくため、カネコタツヒトの身体は自然と防御機能を備えるようになった。すなわち、オートリバース装置。限界を超えると、指を突っ込んだりしなくても、自動的にプーッと逆流させることができるようになったのだ。

 あの日は、たぶん、3回ほど装置を作動させた記憶がある。もう死にそう。なのに、元気バリバリの高田さんが「やっぱシメはうどんでしょ」などと言い出すものだから、白み始めた空の下、ふらつきながらきつねうどんを流し込むハメになった。ホテルに帰ると、ほとんど失神に近い状態で意識を失う。

 で、午前11時。ベッドサイドにおいてあったケータイが鳴る。わたしは普段、友人、仕事関係の知人にかかわらず「絶対に午前中には電話をしないでくれ。したら縁を切るから」となかば本気で宣言している。基本的に電話は嫌い。午前中はもっと嫌い。よって、午前中に電話をかけてくる知人などいるはずがない。にもかかわらず、電話は鳴った。放っておいても鳴りやむ気配はない。仕方なく、というか怒気をにじませながらケータイを取る。

 高田さんだった。

 「あ、たっつぁん、これから寿司食いに行こうよ」

 いや、あのですね、ほんの5時間前まであんなに飲んでたじゃないですか。腹なんか全然減ってないですし、まして寿司なんて......などと言えるはずもなく、さっきの怒気はどこへやら、口ごもるわたしに高田さんは容赦なくたたみかける。

 「じゃ、10分後に下のロビーで」

 顔はアンパンマンのようにむくんでいる。歯ブラシを突っ込むと、猛烈な吐き気が込みあげてきた。それでも、高田さんに呼ばれてしまった以上、断るわけにはいかない。

 出かけていったのは、長居スタジアムのそばにある高田さん行きつけの寿司屋だった。

 「大将、生ふたつ!」

 気が遠くなりそうになった。いきなり朝っぱらからビールっすか。ジョッキが出てくる。高田さんが把手を持つ。仕方なくわたしも持つ。乾杯。杯を乾かす。乾かしたくないけど、高田さんがプハーッとやってしまい、わかってるよな的な眼差しを送ってくるものだから、死ぬ気になって乾かす。

 「オトコだねえ。次、焼酎にする?」

 本当に本当に、気が遠くなりそうになった。有無を言わさずに出てきたのはまたしても森伊蔵の一升瓶。一升瓶です。昨日、というか数時間前まであれだけ飲んでいたのに、真っ昼間っから一升瓶。

 結局、寿司屋を出たのは午後11時。ほぼ時計でいうと一回り、お店にいた計算だった。その間、森伊蔵は2本、カラになった。終わった。何回もオートリバース装置を作動させたけれど、やっと終わった。崩れそうになりながらも猛烈な安堵感を覚えていたカネコタツヒトに、高田さんは言った。

 「冷麺食いたくない? 焼き肉屋行こうよ」

 おかげでわたくし、いささかお酒が強くなりました。大学時代、会社員時代のカネコタツヒトを知る人間からすると信じられないぐらい、飲めるようになりました。

 で、この時期は新酒が美味い。

 ビール、焼酎、泡盛、ウィスキー、ワイン、ホッピーと、酒ならばなんでもいただくカネコタツヒトだが、ここ最近、家で飲むのはもっぱら日本酒。いろんなところを試した結果、最近では佐野屋JIZAKE.COMというところからおすすめの日本酒を取り寄せて楽しんでいる。

 ちなみに、高田さんと知り合う以前、我が家の冷蔵庫にはビールさえ入っていないことがほとんどでした。

 いまは、日本酒用の冷蔵庫があるカネコ家です。

 しかしなあ、4番バッターが3本もホームラン打って負けるチームってどうなのよ。

 それはさておき、昨日のバルサTVで、実に面白いものを見させてもらいました。

 後半43分。スコアは4-0。バルサ陣内でのFK。キッカーはラファエル・マルケス。ボールをセット。助走の距離を取った......あれ? 蹴らない。主審のハワード・ウェッブ氏(職業・警察官)が「早く蹴りなさい」と促す。でも、蹴らない。テレビカメラがアップでマルケスを顔を抜く。日本語2文字で伝えるとこんな表情だった。

「何か」

 カネコタツヒト、ピンときました。実は後半開始早々、こんなこともあろうかと思ってコメントしてたんです。

「ここまで前半のうちに大差がついてしまうと、バルサの選手の中にはもう1枚イエローカードをもらって累積をリセットしようって選手が出てくるかもしれませんね」

 ただ、そう口にしながら、ちょっと自信がなかったのでこうも付け足しました。

「でも、バルサの場合、試合に出るということ自体が大変なことですから、自分のポジションを明け渡すような自信家はなかなかいないとも思いますが」

 そしたら、ラファ・マルケスです。こりゃ明らかに露骨な遅延行為。カードが出そう。出た。まさか、まさかホントにそうなのかと思ってたら、出ました、テロップに。

『Misses next match』

 やっぱりかい! その瞬間、平畠さんも大爆笑。で、コメントが気が効いてました。

「こんなに誰も傷つけないイエローカード、初めて見ましたわ」

 おお、言われてみればその通り。相手を削ってのイエローカードなら珍しくない。でも、遅延行為なら誰も痛まない。肉体だけでなく、0-4で負けてるバイエルンからすると、精神的にも痛まない。誰もイライラしないし、主審もカッカしない。実際、現地のコメンテーターも大爆笑でありました。

 よっぽどミュンヘンに行きたくなかったんだろうなあ、ラファは。まあ地中海性気候のバルセロナに比べれば、4月のミュンヘンは痛いほど寒い日もあるし、勝負が決まった試合で肉離れでも起こしたらつまらないし。酒飲みからすると、微妙な燻製臭がクセになるヴァイツェン(白ビール)をがぶ飲みするって楽しみはあるんだけど。

 で、自信もたっぷり。1試合出場停止を食らっても、解ければすぐにレギュラーを取り戻せるって自信がなきゃ、あんなことはできっこない。いやいや、大したもんです。吉本芸人、平畠さんも爆笑させた"間"もなかなかのもの。やるね。やりよるね。

 ええなあ、自信があるのって。

 去年から数えて巨人に8連敗。FC琉球は開幕から4連敗。今日の先発はたぶん能見で、琉球の明日の相手は首位のガイナーレ鳥取。

 勝てる、と言い切れる自信がほしい!

 もし阪神が3タテ食らって、琉球が5連敗なんてことになったら、また寝込んでしまいそう......って、あかん、発想が弱者のメンタリティそのものになっとる。

 ここは、届いたばかりのとびっきりの純米大吟醸『獺祭』でもかっくらって、大虎になっときますか。

 いや、大変申し訳ない。まさか、このページを見てしまったがためにバルサ戦の結果を知ってしまった方がいようとは。ちなみに、これからバルサTVの収録です。何分に、誰が点をとったかという部分だけは、なんとか情報を遮断し続けています。

 でも「いやあ、バルサ、本当に強いですねえ」とやるとちょっと嘘くさい。悩ましいところです。
 ところで、昨日はメジャーで上原対松井の対決がありました。世間的には元巨人同士の対決、ということになるんでしょうが、カネコタツヒト的には「阪神ファンでありながら巨人に強奪されてしまった選手同士の対決」。

 特に上原。以前、インタビューした時にこんなやりとりをした記憶があります。

 「甲子園て、あと一人、あと一球になるとコールが起きるやないですか。巨人の選手である以上、あのコールが聞こえてくるってことは自分のチームが負けてるってことなんですけど、ついリズムをとってしまう自分がいるんですよねえ」

 なら、なんで巨人に入ったのよ。

 「だって、ぼくが卒業するころって、阪神むちゃくちゃ弱かったやないですか。就職先として考えた場合、ちょっと......」

 そしたら、いまの阪神だったら入団してたってこと?

 「ありえたでしょうね。やっぱり、子供のころから好きやったチームですから」

 じゃあこうしなさい。FAで巨人から阪神に入団する史上初めての選手になる。

 「あ、おもろいかも」

 メジャーリーグでのプレーは、彼が大学時代から夢見ていたこと。本人曰く「第二の野球人生」だそうです。素晴らしい。大いに頑張ってもらいたい。

 でも、「第三の野球人生」があってもよいのでは。

 上原だけじゃない。松井もそう。メジャーでジャンジャンバリバリ(おお、そういえば昨日はエヴァンゲリオンが暴走モードに突入して13連チャン! 赤坂エスパスは等価交換! ブラボー!)活躍して、そのあと、人生最後のチームとして子どものころから好きだったチームを選ぶっていうのは、大ありでしょう。

 というか、あってほしい。

 あ、ところでどうも誤解が多いようなので申し上げておきます。わたくしカネコタツヒトは、必ずしもバルセロナ・ファンというわけではありません。そりゃレアル・マドリーよりははるかに好きですけど、リーガでいったらベティスやラ・レアル(レアル・ソシエダ。目下2部の6位)の方がずっと気になるタチなのです。ちなみに世界一好きなチームはボルシア・メンヘングラッドバッハ。

 じゃあなんでバルサTVをやってるかって?

 上原君ならわかってくれるはずです。ハハハ。

 あれは高校時代のこと。何気ない母親の一言に反抗期真っ盛りだったカネコタツヒトはブチ切れたことがある。

「ふざけんじゃねーよ。こっちがどれだけ我慢して聞かないようにしてたと思ってんだよ!」

 母親の一言。それはこんな感じだった。

「凄かったねえ、ブラジル。ソ連が勝ったと思ったけど」

 時は82年6月。スペイン・ワールドカップがいよいよ開幕。とはいえ、高校生でサッカー部に所属している人間としては、そうそう深夜に放送されるライブを見るわけにもいかん。そんなわけで、長年ため込んだお年玉をつぎ込み、ビデオを購入し、せっせと録画。外出中はワールドカップに関する一切の情報を遮断し、なにも知らない状態、つまり疑似ライブ環境を作り出して帰宅後の観戦に備える。

 世界のサッカーと言えばダイヤモンド・サッカーしかなかった時代である。ライブでビッグゲームを味わえる機会はワールドカップしかない。わたしだけでなく、かなりの数のサッカー部仲間が同じことをしていた記憶がある。

 それなのに、嗚呼それなのに、、母親の一言ですべてが台無しになった。

 懐かしいよなあ。

 あのころはワールドカップについてのニュースを流すのなんてNHKしかなかった。民放はシカト。新聞もシカト。情報を遮断するのはそんなに難しいことではなかった。

 いまではできない。ワールドカップどころか、チャンピオンズリーグの結果も、ゴールシーンも、あちこちの放送局でオンエアされる。電車に乗っていると、若いお兄ちゃんが「すげかったよな、昨日のバルサ」とか言っている。

 それが問題なのだ。

 ご存じの方がいらっしゃるかもしれないが、わたしは最近、バルサTVという番組のコメンタリスタをやっている。相方は吉本芸人の平畠さん。FCバルセロナのリーガ、コパ、チャンピオンズリーグにおける試合を、録画で中継していくという番組だ。

 聞いた話によると『ダイヤモンドサッカー』で解説を担当していた岡野俊一郎さんは、オンエア前にビデオをチェックし、つまりあらかじめ何が起こるかを把握したうえで中継に臨んでいらしたという。番組がサッカー小僧のバイブルだった時代である。うかつなことを言うわけにはいかんという、冷静沈着な岡野さんらしい配慮によるものだったのでは、と想像する。

 ただ、冷静沈着とはほど遠いところにいるカネコタツヒトが、同じことをやるわけにはいかん。というか、できない。わかっているゴールシーンで興奮したふりをするのも抵抗がある。

 というわけで、バルサTVがあるときはできるだけ情報を遮断したい。火曜日の試合であれば、おお、ビジャレアルが先制したか、ポルトも頑張っとるなとザッピングをしながらチャンピオンズリーグを楽しむのだが、昨日の場合はチャンネルをひたすらリバプール対チェルシーに固定し、カンプノウで何が起こっているかを見ないように、聞かないように、必死になって抵抗する。

 だから、言わんといてよ。

 今日はこれから日本カーオブザイヤーの会合がある。モータージャーナリストのみなさんが顔を揃える。で、いるんだわ、サッカー好きの方々が。

「凄かったですねえ、昨日のバルサ」

 間違っても、そんな言葉を口にしないでほしい。「ひどかったですねえ、昨日のバルサ」なんて言うのも聞きたくない。バルサTVの収録は金曜日。それまで、こっちは必死になってネットからもテレビからも逃げまくっているんだから。

......あ、と思ったらメールが来てた。タイトルは「祝! バルサ快勝」

 もういい。こうなったら、せめてゴールシーンの映像だけは遮断するようにするから。

 少なくとも滞在中に2回は更新するつもりだったのだが、足を踏み入れた途端、意気込みがハラハラと崩れていくのがわかった。

 こらいかん。パソコンを開いてる場合とちゃうわ。

 なんと申しましょうか、空気が、光が、街並みが、人の顔が、すべてが勤労を阻止するベクトルに向いているんだよなあ。

 いやあ、素晴らしいところでした。石垣島。

 何が素晴らしいって、とにかく気候が素晴らしい。沖縄本島から南西に約440キロ。当然、本島よりも暑いだろうと想像していたのだが、気温はともかくとして、湿度が低く、空気がカラッとしている。

 4月だから、だったのか。それとも、たまたまそういう日にめぐり合わせたのか。

「こっちはいつもこんな感じですよ。本島ほど湿度は高くないですから」とは初日に言った居酒屋のお兄ちゃん。まあビールが美味いこと美味いこと。ついグビグビグビグビと呑み倒してしまい、案の定このページの更新はできず。

 2日目は釣り。3日目はフェリーで10分ぐらいのところにある竹富島へ。朝起きるとペットショップに預けた3匹の犬を引き取りに行き、そこからは一緒に行動。一日の終わりは綺麗な遠浅の底地(すくじ)ビーチでの水遊び。ボールを海に向かって投げる。犬が飛び込んでとって来る。また投げる......を繰り返して、最後は水道の水で毛にこびりついた塩と砂を洗い流す。夜になれば、立派なオトナとしては酒を呑まなくてはならないから、またしてもページの更新はできず。

 なのに、自己嫌悪がちっとも沸いてこないから嬉しいやら困ったやら。

 4日目。本島に戻ってFC琉球の試合を観戦。なぜか、いつも沖縄から東京に戻ったときに感じるのと同じ心持ちになった。なんというか「ああ、都会に帰って来たなあ」って感じ。でも、琉球がボロ負けしてしまい、おまけに阪神まで負けてしまったものだから、完全にやる気を喪失。泡盛に走る。

 しっかし、本島もいいところだけど、石垣島や竹富島にあった"極楽感"には中毒性のようなものさえ感じてしまった。

 ただ、本島のヒトは言うわけです。

「石垣の方がこっちより爽やかだった? ありえないよ、そんなこと。あっちはこっちより絶対に暑いんだから」

 正しいのは石垣島の居酒屋『源』美崎店の店員さんか、それとも豊見城南の儀保先生か。真相を確かめるためには、また石垣に行く必要がある。

「じゃあ働きなさいよ」とヨメ。はい、その通りです。

 WBCの投球制限、最初に見たときは「なんじゃ、こりゃ」と思った。先発ピッチャーが5回にいかないうちに、あっさりとマウンドを下りる。ノックアウトされたわけじゃなくても、それどころか無失点に抑えていても、あっさりと下りる。野球に見慣れた者からすると違和感ありありである。実際「あれじゃ野球じゃない」と批判をしているプロ関係者は少なくなかった。

 でも、いつの間にか慣れた。勝ってしまえば、投球制限というルールに文句をつける人もいなくなった。

 そもそも、なんで球数を制限しようなんてルールが生まれたのか。

 ピッチャーの肩を守るため、である。

 我らが虎さんチームの若きエース、岩田が肩を痛めてしまったというニュースがあった。原因はいろいろあるんだろうが、一つにはWBC球と普段使っているボールとの微妙な違いも関係しているらしい。

 以前、アメリカに井川慶の取材にいったとき、こんなことがあった。

 「これがメジャーの使用球で、こっちがマイナーの使用球。マイナーの方が日本で使っていると感覚が似てるんで投げやすいんですけれど......ほら、全然ちがうでしょ」

 2つのボールを渡されて、思わず言葉に詰まってしまった。

 何が違うのか、全然わからなかったのだ。

 そりゃ確かに刻まれているロゴマークは違う。言われてみれば、メジャー球の方が少しばかりゴワゴワしているようにも感じる。ただ、それはあくまでも"言われてみれば"であって、目隠ししてのブラインドテストをされたとしたら、わたしにはわからなかっただろう。

 その程度の違いが、井川慶には大問題だった。実際、マイナー球とメジャー球では、肩にかかる負担というか、球数を投げ終えたあとに残る感触も微妙に違うのだという。

 ピッチャーの感覚とは、かくも繊細で狂いやすいものなのだ。

 だから、WBCを主催するメジャー側の人間は、なんとしてもピッチャーを守ろうとする。普段は投げ込まない時期に異様な球数を投げることによって、シーズンが台無しになってしまうことを防ごうとする。すでに肉体的にも精神的にもほぼ完成した、超一流のピッチャーたちを守ろうとする。

 はて、高校生のピッチャーって、肉体的にも精神的にも完成されているのだろうか。

 WBCが決めた、いささか奇異にも感じられるルールに、それでも日本の野球界は従った。全面的に賛成というわけではなかっただろうが、そんなもん絶対に受けいれられるかい、と猛反発するでもなかった。つまりは、投手の肩は繊細かつ消耗品でもあるというアメリカの論理に従ったわけだ。

 なぜその論理は、高校野球に及ばないのだろう。

 今日の選抜高校野球準々決勝、デイリースポーツ曰く"虎の恋人"とされる花巻東の菊池投手は先発しなかった。おそらくは2日前に120球を超える球数を投げているエースに対する、彼の将来性に対する、監督の配慮だったのだろう。負けるようなことがあれば「相手をナメたのか」と非難されかねない、非常に勇気のいる決断だったはずだ。

 世界一を決める試合でさえ100球しか許されていない球数が、高校野球になると無制限になってしまう。投げるか投げないかは、プロのトレーナーでも意志でもない監督の、決断に委ねられてしまう。

 選手だったら、それも甲子園に出てくるような選手だったら、当然マウンドに立ちたいだろう。ここで肩が壊れたって悔いはないと思う選手だっているかもしれない。

 でも、それでも止めるのが大人(たいじん)ってものじゃないだろうか。

 確かに高校時代、松坂は連投しても壊れなかった。だから大丈夫? 違うでしょ。壊れなかった松坂の影で、高校時代の連投のツケを後になって払うことになったピッチャーはたくさんいる。それこそ、日本代表に選ばれるような選手だって、微妙のボールの違いで肩を痛めるケースはあるわけなんだから。

 なぜルールを作ろうという動きが出てこないんだろう。

 ルールがなければ、岩隈だって松坂だって、もっともっと投げたかったはずだ。原監督だって、続投をさせたかったはずだ。でも、ルールがあった。だから、早めの交代を前提とした対策を立てた。

 日本の大人(たいじん)は、つまり高校野球の運営を司る高野連は、毎日新聞は、朝日新聞は、高校生の肩をどう考えているのだろう。

 まさか、プロとして国を代表するようになった選手の肩よりもタフにできている、とでも?

 スポーツライターの玉木正之さんは、WBCで日本が勝てた要因の一つに「甲子園でトーナメントの戦いに慣れているから」という点をあげていたが、確かに、高校野球の存在が日本野球を支える大きな源になっていることは間違いない。

 でも、直さなくていい部分がないわけではもちろんない。

 いますぐ、なんていうつもりはない。けれども、あれだけWBCに沸いておいて、あの大会で適用されたルールがまるで省みられないというのは、やっぱりおかしい。

 逆ならば、つまり興行でもあるプロは投げたいだけ放ってもかまわないけれど、アマチュアたる高校生は将来のことも考えて一定以上の投球を禁じる、とかいうのならばわかるのだが。

 意図的だったかどうかはわからない。でも、いまになって思えば、きっかけは3年前のあの一言にあったような気がする。

「今後30年は日本に勝てない、と思わせるような戦いをしたい」

 イチローのこの一言によって、韓国人は燃え上がった。日本のスーパースターは、一夜にして韓国最大のヒールとなった。サッカーにおいては、日本よりも歴史、実績ともに上だという自負が彼らにはある。日本の側から"上から目線"の言葉が発せられることもない。

 だが、イチローの言葉は正真正銘の"上から目線"だった。コリアンの感情を最も強く刺激するスタンスの言葉だといってもいい。韓国人にとって、イチローは久しぶりに出現した"全身全霊をもって憎悪を叩きつけられる存在"となった。

 だからWBCの日韓対決は盛り上がった。

 野球に限らず、サッカー、ハンドボール、バスケット、バレー......日韓の対決はあらゆるスポーツの世界で行われている。だが、両国の情熱が等しくピークに達した中での対決となると、実はそれほど多いものではない。80年代から90年代にかけて、韓国サッカーが"アジアの虎"と呼ばれる最初の全盛期にあったころ、日本のサッカーはまったくの不人気だった。韓国が"すわ対日戦だ"と血相を変える一方で、日本では対決の存在すら知らない人がほとんどだった。最近になって行われるようになった野球のアジア・シリーズも、主催国たる日本の盛り上がりは今一つである。

 これでは、盛り上がっている側は辛い。

 勝利の歓喜が己の血を沸騰させるためには、うずくまる敗者の血の涙が必要になってくる。目の当たりにする強烈な挫折が、生き延びた喜びを倍加させてくれる。

 韓国が求めていたのは、うちひしがれる日本だった。しかし、彼らが求めているほどには、日本はうちひしがれなかった。国が喪に服すほどにはうちひしがれなかった。

 そこで出たイチローの発言。もちろん、それは彼らの神経を逆撫でするものではあったけれど、同時に、日本が本気になったことを、少なくともイチロー本人は本気だということを表す発言でもあった。

 韓国側からすれば、本気の日本と戦い、倒すチャンスが、ようやく出現したのである。ゆえに彼らは盛り上がり、彼らの盛り上がりは、やがて日本にも伝播した。もはや韓国野球は自分たちが上から語れるほどちっぽけな存在でないことを痛いほどに思い知らされた日本人は、韓国人と同じぐらい、相手をぶちのめすことを渇望するようになった。

 だから、WBCは盛り上がった。大会方式がおかしい、同じ国と5回もやるなんてナンセンスだ......というもっともらしい声があがる一方で、視聴率の上位を占めたのはいずれも日韓対決だった。

 だから、次はアメリカからイチローが出現することを期待したい。

 もし今回のWBCで日本が韓国に負けていたらどうなったか。わたしだったらこう思っただろう。

「でも国内リーグのレベルは日本の方が高いし」「ギャラだって日本の方が上だし」「その証拠に日本でプレーしたがる韓国人選手多いし」「そもそも日本と韓国では野球の歴史が違うし」

"日本"を"アメリカ"に、"韓国"を日本に置き換えてみてほしい。WBCにさしたる興味も持っていなくて、でも母国が負けたことを知らされた負けず嫌いのアメリカ人の言い訳に変わりうるのだ。

 WBCが終わったあと、アメリカでは「日韓から学ぶべきだ」といった論調の記事が目立ったという。 なんだか、リベラルぶった上から目線って感じで、個人的にはあんまりいい気持ちはしない。悔しがってない、血の涙を流すほど痛い敗戦じゃないっていうのがありありな感じがして。

 欲しいのは、本気の上から目線。日本人なら誰でも知ってるようなメジャーの超大物が、イチロー的な言葉を口にしたとしたら。

 日本は燃え上がる。そして、燃え上がった熱が、おそらくは次もアメリカを撃つ。アメリカは敗北の凄まじい痛みを味わい、そうなって初めて、WBCはすべての国が威信をかけて臨む戦いとなりうる。

 今回、WBC日本対アメリカ戦のアメリカでの視聴率は、たったの2・1パーセントだったという。サッカーの母国イングランドが長くワールドカップに対して冷淡な態度をとり続けていたように、いまのところ、野球の母国も世界一決定戦に本腰を入れきってはいない。

 それでも、ヨーロッパの熱、南米の熱が結果的にはイングランドをも巻き込んでいったように、アジアの熱、中米の熱は間違いなく野球発祥の地にも伝わっていく。遅かれ早かれ、WBCは世界の野球ファンにとって極めて重要な大会になっていく。

 思えば、3年前は日本人もWBCという大会に半信半疑な部分があった。流れが変わったきっかけの一つは、やっぱりイチローの言葉だったような気がする。

 たった一人の言葉で時代が動くこともある。意図したかはともかくとして、イチローはそのことを実証した。

 次は、アメリカの番である。歴史は繰り返すものだというのであれば。

 根拠はまったくない。ないのだが、個人的にかねてより抱いている信念がある。

「ニコチンは花粉を駆逐する」

 わたしはヘビースモーカーである。かつ、花粉症ではなく、わたしの周りのヘビースモーカーにも花粉症はいない。

 ただ、最近になって我が信念を脅かす人間が現れた。

「俺、バリバリ花粉症っすよ」

 Jスポーツの控室。セーラムをプカプカふかしながらのたまったのは、吉本芸人にして最近では実況やMCの仕事もこなしている平畠啓史さん(どうでもいいことだが、彼の麻雀は非常に固い。さすがは元スイーパー。鉄壁のディフェンス)。ちょっと待たんかい。君のその一言で、俺の20年来の信念が揺らいでしまうやないか。

「あ、でも俺の花粉症ってもともとなんですよ。タバコ吸うようになる前から」

 ふむ、それならばわからんでもない。簡単に言えば、駆逐する前にイワされてしまったというわけね。と平畠さんの意見を強引に退けたわたしではあったが、自らの信念に対するいささかの疑念が生じてしまったのは事実だった。

 で、先週。FC琉球の敗戦にショックを受けたわたしは体調を崩した。どう崩したかというと、鼻水が止まらず、関節の節々が痛み、なぜか目がしょぼしょぼした。

 それが1週間続いた。

 嬉しそうだったのは花粉症歴の長いヨメである。

「ついにきたね、あんたも。ようこそ、花粉症の世界へ」

 違う。ニコチンは花粉を駆逐する。よって、わたしは花粉症ではない。アイボンで目を洗うと大変にすっきりしてしまうが、でも、断じて花粉症ではない。これは風邪。悪質なウィルスによってあちこちの粘膜がやられてしまっているのだ。

 正しいのはヨメか、わたしか。答は週末に出ることが決まっていた。FC琉球の第2節はホームゲーム。つまり、花粉症患者にとってパラダイスと言われる沖縄本島での試合なのだ。

 そして、答は出た。

 万歳! 鼻水は止まらなかった。セキも止まらなかった。食欲は戻らず、ビールや泡盛を呑もうという気も──あまり──起きなかった。生まれて初めて、体調の悪さを感謝したい気分になった。

 ただ、この体調の悪さは、開幕戦よりもさらにお粗末な内容で2連敗を喫してしまったFC琉球のせいである可能性も否定できない。そこが、いささか痛いところ。

 朝。目が覚めてみると、相変わらず白目が充血している。アイボンがほしい。だが、花粉症患者でないと信じているわたしは、沖縄にアイボンを持ってきていない。仕方なく、しょぼつく目をぬぐいながらテレビをつける。

 日本、アメリカに鮮やかな逆転勝ち。

 これで、2次ラウンドを1位で突破したことが吉と出た。母国アメリカに勝った自信と、ベネズエラに勝った自信。どちらの自信がより分厚いかは言うまでもない。日本は、ハイリスクをとってハイリターンを得た。

 昨年は阪神の日本一を、今年はFC琉球の開幕ダッシュをあちこちで宣言してきた偉大なる予言者カネコタツヒトは確信した。

 明日は鉄板で日本の勝ちだな。

『WBC』

 これはもう、大会との相性といってもいいんじゃないだろうか。

 韓国に2敗目を喫したことで、日本の選手たちは相当に精神的に追い詰められていた。いや、選手だけじゃない。コーチングスタッフにしてもまた然りだった。4回表。稲葉の打球がライト線を深々と破ったにも関わらず、3塁コーチャーを務める髙代コーチは1塁ランナーの青木を3塁で止めた。TBS解説の佐々木大魔神は「行けたんじゃないですかねえ」とコメントするにとどめていたが、「なんで行かんのや!」と叫びたいのを我慢しているのがありありだった(話はそれるが、今回の佐々木、清原両氏の解説は実に面白い)。

 でも、高代コーチの気持ちもわかる。初回、日本は青木が牽制球で刺されている。こういう試合だから、積極的にいかなければ......との思いが、まずは裏目に出ていた。もし2度目も積極策に出て、強肩の揃ったキューバに補殺でもされようものなら、流れは完全に相手の方に行ってしまうし、自分の決断も暴挙として集中砲火を浴びることは確実。そりゃ、回しかけた腕もすくむって。

 ところが、心情的には痛いほどわかる高代コーチの"慎重策"は、ものの見事に裏目となりかける。犠牲フライでもいい場面で村田は浅い中飛で2アウト。「ああ、やっぱりあそこで突っ込んでおけば」との悔いが頭をもたげる。続く小笠原も、ジャストミートはしたものの、センターが捕球態勢に。いよいよ大きくなってくる悔い。高代コーチの悔い。村田の悔い......。

 そしたら、ポロリだよ。

 これで日本は解放された。負けたら終わりの呪縛から。積極策よりも慎重策に逃げ込みたくなる重圧から。あとはもう、ワンサイドゲーム。

 ワールドカップで4度の優勝を果たしているイタリアは、なぜか欧州選手権では1回も勝てていない。欧州選手権で2度の優勝を果たしているスペインは、ワールドカップとなると決勝に進出したことすらない。サッカーの世界では、国と大会の相性というものが確実に存在している。

 どうやら、WBCの女神様は、日本がお好きらしい。前回大会の優勝も見えざる力に導かれたとしか言いようのない部分があったけれど、今日の試合にしても、まさか、あの場面で落球が起こるなんて、普通じゃちょっと考えられない。

 こりゃ、なにか持ってますな。

 さて、無事に決勝トーナメント進出を決めた日本だけれど、明日の戦いはちいと難しい。というのも、もう一方のプールの順位決定戦で、ベネズエラが勝って1位を決めてしまったからだ。

 2位はアメリカ。

 さあて、どうする。韓国に勝てば、準決勝の相手はアメリカになる。かといって、わざと負けるようなことをすれば、せっかくの勢いが消えてしまう可能性もある。で、おそらくは韓国も、同じことを考えている。できることならアメリカとはやりたくない。だけど、日本にわざと負けるなんてことは許されない......。

 勝ちたいけれど勝ちたくないような、負けたくはないけれど負けてもいいような。

 首脳陣にとっては極めて難しい判断を要求される試合になる。明日の試合がどんな意味を持っているかは、準決勝が終わってみないとわからないからだ。

 こういうとき、サッカーの世界ではこれまで試合出場の機会に恵まれなかった選手を抜擢し、彼らに彼らなりの全力の試合をやらせることが多い。勝てばチームの空気はいよいよ盛り上がるし、負けても痛手は小さいからね。

 原監督の決断やいかに。

 

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