ガンバ大阪の宇佐美が飛び級でU―20日本代表に招集されるというニュースがあった。最終予選の帰趨(きすう)いかんでは、A代表入りもありえるという。何回もこのコラムで書いてきているが、現状の戦力、能力では南アフリカでの躍進は期待できそうにない。新しい才能の台頭には大いに期待したいと思う。
......と書いてみて、ふと気づいたことがある。
菊原志郎がそうだった。礒貝洋光もそうだった。小野伸二もそうなりつつある。10代半ばにして天才の名を欲しいままにし、若くして代表入りを果たした選手は何人かいた。
ガンバ大阪の宇佐美が飛び級でU―20日本代表に招集されるというニュースがあった。最終予選の帰趨(きすう)いかんでは、A代表入りもありえるという。何回もこのコラムで書いてきているが、現状の戦力、能力では南アフリカでの躍進は期待できそうにない。新しい才能の台頭には大いに期待したいと思う。
......と書いてみて、ふと気づいたことがある。
菊原志郎がそうだった。礒貝洋光もそうだった。小野伸二もそうなりつつある。10代半ばにして天才の名を欲しいままにし、若くして代表入りを果たした選手は何人かいた。
韓国サッカーと言えば馬力。それが長年にわたるわたしの個人的な印象だった。
単純にボール扱いの技術に関していうならば、80年代半ばあたりの時点で日本もヒケをとらなくなっていた。チームとしては歯が立たなくても、金田のドリブル、木村のFK、風間のセンスなどは負けていなかった印象がある。
だが、韓国には馬力があった。車範根がいて、金鋳城がいて、崔淳鎬がいた。繊細なサッカーで攻め込もうとする日本は、彼らの強大なハンマーで叩きつぶされるのが常だった。
時代は、変わった。
W杯予選を戦いながら、本大会のことを考えるなど、本来であればナンセンスというしかない。まだほとんどの国が南アフリカ行きを目指して目の前の
試合に勝つために情熱を注いでいる。言い方を変えれば、先のことを考えながら勝てるほど、目の前の予選は甘くないということなのだ。
だが、幸か不幸か日本の戦う最終予選は、甘い。
前回大会の予選もそうだった。日本にとって、強敵と言えるのはイランだけだった。しかも、2試合あった対戦のうち、1試合はすでに本大会出場を決 めてからのものである。つまり、世界中で多くの国が体験している"決戦"を、日本はたった1試合しか経験していなかったことになる。
今回も状況は似通ってきた。いうまでもなく、日本にとっての最大のライバルはオーストラリアだが、6月にメルボルンで行われる両国の対戦は、決戦ではなく消化試合の意味合いを帯びてしまう。両国にとって、これは大きなマイナス材料となる。
この国における代表チームの特殊性が原因なのだ、とは思う。
W杯予選を戦う多くの代表監督にとって、最大の使命はチームを本大会に導くことである。娯楽性の追求はクラブチームの監督に任せておけばいい。とにかく勝つ。不細工だろうがなんだろうが、徹底して勝ちにこだわる。
岡田監督がやったのは、まさしくそうしたサッカーだった。
WBCが終わった。さあ、次はW杯予選だ......と気持ちを切り換えるべきなのだろうが、簡単にはできないほどの達成感、脱力感がある。それぐらい、WBC決勝の日韓対決は壮絶で、見応えのある一戦だった。
93年のJリーグ発足当時、日本のサッカー界が野球界に対して持っていた数少ないアドバンテージのひとつは"地域密着"であり、も う一つは"国際大会"の存在だった。だが、Jリーグの専売特許でもあった地域密着は、いまやプロ野球界にも完全に取り入れられ、WBCの定着と発展によっ て、"ジャパン"は野球にも当てはまる名詞となった。今度は、サッカー界が野球界から学ぶ時期ではないか。
史上最悪のW杯はどの大会か。わたしの答えは決まっている。94年W杯米国大会が最悪だった。なぜか。サッカーをプレーするにはあまりにも暑すぎたからである。あの大会は、アジア勢の健闘が光った大会でもあったが、見方を変えれば、殺人的な暑さが欧州勢をボロボロにしてしまった大会だった。なにしろ、ピッチ上の温度が50度近くに及ぶことさえあったのだから。
暑さは、サッカーの質を低下させる。間違いなく、それも大幅に低下させる。2002年のW杯日韓大会が質として決して高いものにはならなかった原因のひとつにも、暑さが関係しているとわたしは思う。実際、日本の気候に辟易(へきえき)とし、オフレコの場で「二度と日本ではプレーしたくない」と漏らした選手も少なくない。
では、寒さは質を落とすだろうか。
そんなことはない。
では、日本の寒さは世界的にも屈指の厳しさだろうか。
試合後の記者会見でダニエル・パサレラは言った。
「日本は我々を尊敬しすぎているようだった」
あのときは、わたしもそう思った。09年のW杯フランス大会初戦。こちらはW杯初出場。アルゼンチンには2度の優勝経験がある。とはいえ、もっと挑戦者らしく、果敢に攻め込むシーンが見たかった、と。
だが、それは結果論にすぎなかったのかもしれない、といまになって思う。挑戦者らしく果敢に攻め込んでいたら、歴史的な惨敗を喫していた可能性もあった。
さあ、いよいよJリーグの開幕である。
初のJ1開幕を迎える山形のファンは、いまどんな心境なのだろう。昇格していくチームの踏み台に甘んじていたころを知るファンからすれば、涙がこぼれそうになるほど嬉(うれ)しい開幕であるに違いない。
J2に目を移せばセレッソ大阪の戦いぶりが気になる。柿谷曜一朗。君はいったい何をやっているのか。過去にも、溢(あふ)れんばかりの才能を誇りながら、いたずらにそれを腐らせていってしまった選手はいた。19歳という年齢は、もうサッカー選手としては決して若くない。今年ゴールやアシストを量産し、チームを昇格に導けないようであれば「早熟の天才だった」と過去形で語られることもありえるだろう。今年は、必死の彼がみたい。
わたしが学生だった頃、日本には冬でも緑の芝生は育たないというのが"常識"だった。やれ気候がどうだの、品種がどうだのと言われていたが、まったく、いい加減な常識もあったものである。
とはいえ、それが真実だと思い込んでいた当時のわたしにとって、初めて生で見た欧州の鮮やかな芝生は衝撃的なまでに美しかった。こんなところでサッカーをしている国に、日本の選手などかなうはずがない。そう思った記憶もある。
時代は変わった。
昔を思えば信じられない気もするが、09年2月現在、世界で最も美しい芝生のサッカー場は日本にある。浦和レッズがキャンプを張っている鹿児島県指宿市にあるいわさきホテルのサッカー・グラウンドである。
宮崎で行われている野球日本代表合宿の初日には、4万人近いファンが訪れたという。経済危機の影響がプロ野球選手のギャラを直撃した、という話もいまのところは聞こえてこない。不景気になれば真っ先に切り捨てられることの多い日本のスポーツだが、改めてプロ野球人気の根強さを思い知らされた気がする。
言うまでもなく、本来、スポーツは飢えや痛みを癒(い)やしてくれるものではない。ただ、忘れさせてくれることはある。長い歴史を持つプロ野球は、敗戦による飢えや、災害による痛みをいくらかでも和らげる働きを果たしてきた。それゆえに、未曾有と言われる経済危機にあっても、切り捨ての対象から外れていられるのだろうと思う。
日本のスポーツにとって、こんなに喜ばしいことはない。
試合内容は想定の範囲内だった。フィンランド戦同様、1トップ・システムは十分に相手を混乱させていた。少なくとも、カイザースラウテルンで戦ったときより、オーストラリアにとっての日本は危険なチームだった。
チャンスの数の差は予想していた以上だった。どうやら、ピム監督は知日家であるがゆえに、こちらが考えている以上に日本の力を評価していたらしい。あれだけ消極的なサッカーになってしまえば、マラドーナでもいない限りチャンスはつくれない。
だが、笑ったのはオーストラリアだった。
これでアジア杯予選の苦さを忘れることができる。オーストラリア戦を気持ちよく迎えることができる。精神的な影響を考えれば、間違いなく効果的な快勝だった。ヘタな試合をしたら、「湘南より弱い!」と酷評されることが確実だっただけに、岡田監督も、選手も、ひそかに胸をなで下ろしていることだろう。
ただ、フィンランドはあくまでもフィンランドであって、オーストラリアではない。確かにフィンランドには高さがあったが、彼らは高さを武器にするチームではない。これでもか、これでもかとハイクロスを放り込んでくるチームではない。そして、06年のW杯で日本が屈したのは、うんざりするほど力任せのボールを放り込んでくるオーストラリアだった。仮想敵国としては、ノルウェーあたりの方がふさわしかったかもしれない。
FCバルセロナにマルティン・カセレスという選手がいる。87年4月生まれだから、もうすぐ22歳になるウルグアイ出身の若手DFである。
実を言えば、このカセレスという選手、プレー面で見るものを驚かせてくれることはあまりない。バルセロナの下部組織上がりの選手に比べると粗さが目立ち、フィード能力などは極端に落ちる。にもかかわらず、あえてこの欄で取り上げたのは、彼が「子供の頃からのアイドルだった」としてあげている選手の名前に驚かされたからである。
先週末、愛知県刈谷市でJFLの合同トライアウトが開催された。J1、J2の選手はもちろんのこと、ブラジルやアフリカからの参加者がいたのには驚かされた。
だが、集団でやってきた韓国の選手たちには、驚きを通り越してショックさえ覚えてしまった。人数に、ではない。彼らの見せたサッカーに、である。
はるばる日本までやってきた彼らは、決して韓国サッカー界のエリートではない。無名の大学に在学中の選手、アマチュアチームでプレーする選手などが、ウォン安の影響もあるのだろう、日本の3部リーグのトライアウトにやってきたのである。
農耕民族たる日本人に、狩猟民族が生み出したサッカーは適していない――。そんな暴論が真面目(まじめ)に語られていたのは、ほんの10数年前の話である。Jリーグ発足後の16年は、サッカーは環境が整うことによってこんなにも強くなれる、という証明の年月でもあった。
だが、日本のサッカー界にはまだ決定的に欠けている部分がある。
「日本サッカー協会がエリート育成システムみたいなのを始めたでしょ。あそこに外国の選手を10人ぐらい入れたら面白くなると思うんだけどなあ」
「前代未聞の破壊力」とまで言われる今シーズンのバルセロナは、ここまでの17試合で51ゴールをあげている。平均すると1試合につき3ゴール。相手からすると、0―2の負けならば上出来ということになるのだから、確かに恐るべき破壊力ではある。
ちなみに、そのバルセロナが記録した1試合での最多得点は6ゴール(3回)。やられた側は、それこそ魂まで叩きつぶされるような衝撃と屈辱を味わったに違いない。いくらバルサが強いとはいえ、プロとしてあるまじき大失態である。
だが、これがアマチュアやユース年代となると、いささか話は変わってくる。
リーダーは、誰か。
わたしにとって、09年の代表チームの注目点はこの一点に尽きる。
候補生ならば何人かいる。個人的に期待している選手もいる。だが、苦しい状況、本当に苦しい状況に立たされた時、誰がチームの士気を鼓舞し、誰が先頭に立って戦ってくれるのかを想像すると、具体的な映像が浮かんでこない。
浮いて沈んで、沈んで浮いて。五輪にユーロ、W杯予選とにぎやかだった08年もあとわずかとなった。
1年を振り返って、もっとも失望させられたのは北京五輪に出場した男子代表だったか。チーム結成のときを思えば信じられないほどいいチームにはなっていた。直前のテストマッチでも、アルゼンチンを相手に収穫の残る戦いを見せていた。名古屋のストイコビッチ監督が絶賛したのも、あながち外交辞令とばかりは言い切れなかったはずだ。
だが、一番重要な試合となるはずだった本大会の初戦で、彼らは壮行試合とかけ離れた内容の試合をやってしまう。重圧がかかるのはわかる。グラウンド状態が劣悪だったという不運もあった。ただ、刀も抜かず、矢も放たずでの敗戦には、大いに失望させられた。これで日本男子はアテネ五輪、W杯ドイツ大会に続いて、世界大会の初戦に3連敗である。実力の問題があるとはいえ、国際大会に臨む際のメンタルコントロールを考えなければならない時期にきているのかもしれない。
英国のブックメーカーは鉄板だと見ている。マンチェスター・ユナイテッドの1・2倍に対し、ガンバは8倍。06年のW杯で日本がブラジルと対戦した時でさえ、これほどの大差はついていなかった記憶がある。"とびっきりの大本命"対"論外のアウトサイダー"。それがオッズをつけた人間の根本的な認識だろう。
だが、会場となるのは日本である。
圧倒的な戦力を誇るマンチェスターUではあるが、今季、アウェーでの成績はそれほど芳しいものではない。12戦で4勝6分け2敗。7勝3分け無敗のホームに比べると大きく見劣りする。それでいながら、母国のメディア、ファンからは勝って当たり前とみられているのだから、当事者としてはいささか辛(つら)い。
それは実に、心温まる光景だった。先週の土曜日、札幌ドームでの出来事である。
試合終了の笛からはもう小一時間が経過しようとしていた。表彰式、アントラーズの選手たちによるビクトリーランも終わり、フィールド上は静けさを取り戻しつつあった。
そのとき、スタンドの一角から突如としてエールがわき起こった。
「コ~ンサドーレッ!」