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 北京五輪サッカー競技の組み合わせが決まった。日本の入ったB組は、マスコミいわく、「死のグループ」であるらしい。なるほど、アメリカ、ナイジェリア、オランダはどれも強敵であり、全敗もありえる組み合わせではある。

  だが、反町監督が「本大会に残っている以上、相手は強豪国しかない」と語っているように、たった16カ国にしか出場の許されない五輪の場合、「死」でない グループを探す方が難しい。出場国を32カ国にしたことでW杯はいささか弛緩( し かん)してしまったが、五輪にはかつてのサッカー界の厳しさが残って いるということである。オーストラリアはアルゼンチン、セルビア、コートジボワールと同じ組に入った。韓国はイタリア、カメルーン、ホンジュラスである。 地元開催となる中国でさえ、ブラジルと同じ組に振り分けられた。アジアの代表勢からすれば、楽なグループなどあるわけがない。

 ただ、日本にもチャンスは十分にある。



 グラスゴーにあるセルティック・ファン行きつけのバーに立ち寄ったことがある。

 入ってみて驚かされたのは、ケニー・ダルグリッシュやゴードン・ストラカンといった過去の名選手と並んで、JFKの写真がデカデカと張り出されていたことである。ジェフ、藤川、久保田ではない。ジョン・フィッツジェラルド・ケネディの写真だった。

 セルティックのファンが、ユニオンジャックではなくアイルランドの3色旗を振ることは知っていた。しかし、チームとは何の関係もないアメリカの政治家を、ただアイルランド系というだけで愛してしまうケルト人の感覚が、わたしにはどうにも理解できなかった。

 中村俊輔は、そんな場所でプレーしている。



 最悪のスタートを切ったレッズがどうやら立ち直り、ガンバ、フロンターレにも明るい兆しが見えてきた。大波瀾(はらん)の幕開けとなったJリーグだが、ここにきて少しずつ落ち着きを取り戻しつつある。

 そんな中、予想外といっては失礼だが、奮闘を続けているのがグランパスである。

 いうまでもなく、ストイコビッチ監督はいまでいうところの「ファンタジスタ」として世界中に名前を知られた存在であり、彼を中心と するサッカーは世界中に多くのファンを作ってきた。とはいえ、それはあくまでも現役時代のこと。まして、彼が監督を務めることになったグランパスには、か つての彼自身に相当する選手が存在しない。これはかなり厳しいシーズンになるのでは、というのがわたしの予想だった。



 韓国、サウジアラビア、イラン、そして日本。近年、アジアのサッカーをリードしてきたのはこの4カ国だった。さしずめ、アジアの「ビッグ4」といったところだろうか。そして、今後はそこにオーストラリアが加わるだろうというのが、ごく常識的な見方だった。
 ところが、である。

  日本がバーレーンに敗れた3月26日、勝ち点3を獲得した「ビッグ5」は1つもなかった。韓国は北朝鮮と、イランはクウェートと、オーストラリアは中国と 引き分けた。サウジアラビアにいたっては、ウズベキスタン相手に0―3の惨敗を喫し、グループの3位にまで転落してしまった。

 どうやら、アジアもついに新しい時代に突入しつつある。



 柔道の山下が、メダルを期待されていた体操やレスリングの選手が、涙ながらに訴えていたことを思い出す。不参加を撤回してくれ。スポーツに政治を 持ち込まないでくれ。メディアの報道も、選手に同情するスタンスのものがほとんどだったように記憶している。いまから28年前、モスクワ五輪の際の話であ る。

 以来、わたし個人の中にはスポーツに政治が介入することに対する強烈なアレルギーがあったように思う。政治の介入は無条件で悪。それ以上のことを考えたことはなかった。



 サッカーに波瀾(はらん)はつきものだが、これほどまでに波瀾の相次ぐ序盤戦も珍しい。浦和、G大阪、川崎Fが2試合を終えた時点で1勝もしていないのだから、サッカーくじの繰越金がたまるのも当然である。

 さて、数ある驚きの中でも最たるものといえば、やはり浦和オジェック監督の解任劇だろう。まがりなりにも昨年のACLの王座にまで導いた監督がわずか2戦で解任通知を受けるのは、世界的に見ても尋常なことではない。

 確かに、浦和の開幕2試合の内容は芳しいものではなかった。特に、リードを許してからの対策が、お粗末といってもいいレベルにあったことは事実である。



 先週開幕したJリーグに続き、今週末はJFLが開幕する。ほんの10年前の日本であれば、「3部リーグ」のサッカーは到底娯楽にはなりえないレベ ルだったが、いまでは各チームに元Jリーガーが揃(そろ)っている。以前にも書いたことだが、日本のサッカーもいよいよ底辺が分厚くなってきた。

 だが、JFLのチームの多くは、共通する難題を抱えている。先日、バスケットボールのbjリーグのスタッフに話を聞く機会があったのだが、彼らが抱えているのも、まったく同じ問題だった。

 行政の無理解である。

 例外的な地域がいくつかあることはもちろん承知している。しかし、チーム側が必死になって地元に根付こうともがいている一方で、彼らに何の手も差し伸べない自治体のなんと多いことか。



 自分たちは1点をリードしている。ただ、1人退場者を出してしまった。相手は優勝候補の筆頭――。この3つの条件を突きつけられれば、世の監督たちが選ぶ手段は概(おおむ)ね一つしかない。

 つまり、亀になる。

 横浜F・マリノスの桑原監督の取った手は違った。彼は、中盤で奮闘を続けていたブラジル人を外し、アタッカーを投入したのである。守備に一番遠いところの人数を減らすのではなく、敵の喉仏(のどぼとけ)につきつけておくナイフの数を維持しようとした。

 奇策ではある。



 さあ、新シーズンの始まりである。

 昨年は、一気に王朝を、黄金時代を構築せんとしていたレッズの勢いを、土壇場でアントラーズがうっちゃった。あのままレッズが勝っていれば、日本 におけるバイエルン・ミュンヘン的な地位へと駆け上がっていただろうが、現時点においては、その寸前のところで足踏みをしている。

 果たして、レッズはジャイアント・クラブとしての地位を確立することができるのか。はたまた、待ったをかける存在が現れるのか。

 現れるとしたら、それは古豪なのか、それとも予想外のチームなのか。今シーズンのJリーグは、俯瞰的( ふ かんてき)な立場で眺めた場合、歴史的なターニング・ポイントの年として記憶されることになるかもしれない。

 それだけではない。



 まだ日本にJリーグが発足しておらず、海外のサッカーもほとんど見ることができなかった時代、わたしは海外の選手名鑑を眺めるのが好きだった。

 若い選手に興味はない。彼らのプレーは専門誌の写真でみたことがあるだけで、実際のところどんな選手であるかは想像するしかなかったからだ。楽し みだったのは下部リーグのリスト。写真も載っていない地域リーグのクラブに、かつてのビッグネームを探す。すると、これが意外なほど高い頻度で見つけるこ とができた。



 後半開始早々、倒れこんだ内田に韓国選手が手をさしのべた。高麗大学を卒業後、KリーグではなくJリーグ入りを選択した盧廷潤(ノ・ジュンユン) が「親日派」と激しい非難をあびたことを思うと、隔世の感があるシーンだった。メディアや監督が「宿命の対決」とあおったところで、選手たちの意識は確実 に変わってきている。好試合ではあったが、もはや日韓戦にかつての緊張感を期待するのは間違っているのかもしれない。

 それでも、試合を終えた両国の選手は互いに「やはり強いな」という印象を持ったのでは、という気がする。韓国は決定力の高さを見せ つけた。中国、北朝鮮相手であれば乗り切れるピンチが、韓国相手となると致命傷になる。そのことを選手たちが実感してくれれば、今回の失点は良薬となりう る。



【東ア選手権日本1-0中国】バチストンがそうしたように、安田が抜け出した。シューマッハがそうしたように、中国のGKも飛び出した。そして、 シューマッハがそうしたように、悪質極まりない体当たりを敢行した。バチストンがそうだったように、安田もまた、ピッチに戻ることはなかった。

  W杯スペイン大会準決勝、フランス対西ドイツ。フランスがつかみかけた決定的なチャンスは、イエローカード1枚でもみ消されてしまった。それもまた、重慶 で起きたことと同じである。ただ、26年前の西ドイツでは、シューマッハの行動に対して「よくやった」という声と同時に、あまりにも非紳士的すぎるという 非難の声もあがった。あのプレーを中国のメディアはいかに伝えるのか。個人的にはそこに注目したいし、日本の選手があのようなプレーをした際は、ナショナ リズムに目が曇らされることがないようにしたいものだとも思う。



【東ア選手権 日本1-1北朝鮮】点を奪われたからといって、DFが悪いとは限らない。点を取ったからといって、手柄がすべてFWというわけでもない。それでも、この日 の日本の失点は、日本のDFに責任があった。彼らはもちろん真剣だったものの、「骨が折れても勝ちたい」と意気込んでいたチョン・テセほどではなかったか らだ。

 とはいえ、本当の真剣勝負となるW杯予選で日本の選手たちが同じ失敗をするとも思えない。かつての日本の選手は、真剣勝負だろうと 親善試合だろうと、変わらぬテンションでプレーしたものだが、いまは違うということなのだろう。そういう意味では、日本人もずいぶんとイタリア人的になっ た。



 その迫力、その持続力、そしてその爆発力に驚かされ続けたアフリカ選手権から帰国した当日、録画しておいてもらったW杯予選の日本対タイ戦を見た。

 驚いた。

 ほぼ半月の間、毎日のように見てきたアフリカのサッカーに比べると、なんと繊細で美しいことか。

 サイドから放り込む。あるいは1発でウラを狙う。優勝したエジプトなど数少ない例外を除くと、基本的にアフリカのチームがやってい たのは同じサッカーである。一言でいえば単純。しかし、その破壊力たるや凄(すさ)まじいものがあり、「これでは日本は勝てない」というのが率直な感想 だった。



 どうしてこんなことになってしまったのだろう。ガーナでアフリカ選手権を見ていて、日々そう思う。

 アフリカ王者として乗り込んできたコートジボワールを、国立競技場で苦もなく退けたのは15年前のことである。アイボリーコーストと呼ばれることもあった遠来のチームに、見るべきものはほとんどなかった。組織力はもちろんのこと、個人の能力をとってみても。

 W杯日韓大会で対戦したチュニジアも、印象の薄いチームだった。ブラックアフリカンほどの運動能力もなければ、欧州のチームのような組織力もない彼らは、あのときの日本にとって、もっとも与(くみ)しやすい相手であり、また実際の結果もそうなった。

 光陰矢の如(ごと)し。



 ホテルの部屋でインターネットは使えない。携帯電話はつながらない。初めてやってきたガーナで、10数年前にタイムスリップしたような毎日を送っている。
 実をいえば、今回、アフリカ選手権を取材するにあたって、わたしはさしたる期待もしていなかった。W杯ドイツ大会に出場したアフリカ勢が、アルゼンチン、オランダと好試合を演じたコートジボワールを除くと、これといった印象を与えてくれなかったからである。

 だが、アフリカで見るアフリカのチームは、欧州やアジアで見るアフリカのチームとはまるで別物だった。



 「フットボールが帰って来た」――それが96年欧州選手権のスローガンだった。

 まだプレミアリーグは世界のトップリーグとは見なされておらず、イングランド代表も2年前のW杯米国大会出場を逃していた。英国で生まれたフット ボールは、もはや本家本元の手を離れ、どんどんと遠ざかっているようにさえ見えた時代である。前述のスローガンには、それゆえ、自分たちの息子が立派に なって戻ってきたといったニュアンスもこめられていたように思う。親の子離れにも似た諦(あきら)め、とでもいえようか。

 実をいえば、大会自体について覚えていることはあまりない。地元イングランドの頑張りは目についたものの、逆に言えば、頑張り以外 に見るべきものはあまりなかった。ゴールデンゴールで決着がついたドイツ対チェコの決勝戦にしても、サッカーの醍醐(だいご)味の大部分がルールによって 抹殺されてしまったようで、詐欺にでもあったような気分になった記憶がある。

 だが、忘れられない思い出もある。



 スポーツには国民性が表れる、とはよく言われる言葉だが、それは、運営する人間についても当てはまるものらしい。

 思い出すのは82年W杯スペイン大会のことである。フランス対クウェートの一戦中、観客の誰かが主審の使う笛と極めて似通った音色のホイッスルを 吹いた。クウェートの選手たちは思わずプレーを中断してしまい、そのスキをついてフランスのジレスが4―1とするゴールを決めた。

  ところが、ここでとんでもない横やりが入る。スタンドで観戦していたクウェート・サッカー協会の会長でもあるファハド王子が、ゴールを認めた判定を不服と してグラウンドの選手たちに引き揚げを命じたのだ。審判団が懸命になだめたものの、選手たちは聞く耳を持たない。W杯史上初の試合放棄か?......とどよめく 場内だったが、ここでさらに驚くべきことが起きる。



 熱烈歓迎大歓迎、ようこそ高原直泰、である。

 野球の世界では才能の海外流出が嘆かれ、「このままでは日本はアメリカのマイナーリーグになってしまう」という声をよく聞く。WBCで世界一になったとはいえ、ギャランティーやプレーする環境などを考えると、日本の方が劣る部分が多いのも事実である。

 ただ、そうはいっても日本のプロ野球界にはメジャーにまったく関心を示さない選手たちも数多くいる。彼らにとって、メジャーとは憧 (あこが)れではなく、純粋に自分がプレーしているのと違うリーグ、でしかない。そこが、歴史を持たず、レベルの面でも意識の面でも「欧州より下の存在」 と自覚せざるをえなかったJリーグとの決定的な違いでもあった。



 かつて、日本サッカー界には2種類の勝者しか存在しなかった。強い勝者か、幸運な勝者か、である。

 だが、今年の天皇杯の勝者は「歴史の力を得た勝者」だった。

 そもそも、カップ戦の醍醐(だいご)味は波乱にこそある。長丁場のリーグ戦であれば、強い者が勝つ確率が高くなるが、一発勝負となれば、集団の勢 いやツキも大きく関係してくる。JFLで大学生に惨敗したホンダの躍進や、J2の底辺でもがいていた愛媛の健闘は、カップ戦ならではの面白さを満喫させて くれた。



 

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